全てのスポーツや運動で「軸(中心軸)」は、非常に重要なものとされています。
スポーツ、武道、ダンスなど、あらゆる体を動かす指導者で「軸なんて必要ない」と考えている人はひとりもいないでしょう。
でも…。
軸が重要だという指導を受けていても、「じゃぁ、軸って何ですか?」と聞かれると、具体的に答えられる人が少ないものです。
軸とは、いったい何なのでしょうか?
中心線とは
まず、理解しておきたいのが、全てのものには「中心線」があるということ。
中心線とは、物体を回転させたとき、回転する物体の中心(重心となる点)を垂直に結んだ線が物理的な線のことです。
例えば、コマであれば「心棒(シャフト)」に当たる部分が、中心線になります。
コマのように左右対称のものだけでなく、河原にある自然石のように左右非対称のものにも中心線は存在しています。
石積みアートで不規則な形の石を立てたり、複数の石を積み上げることができるのは、中心線をきちんと組み合わせているからなのです。
このように、中心線は、バランスをとることができる垂直線なので、『中心線=重心が取れるバランス線』だと表現することもできます。
中心軸とは
人間の体にも、中心線があります。
物理学では、物質の中心、あるいの重力の中心を「重心」と言いますが、人体の場合、立った姿勢なら、男性(成人)の場合、身長の56~57%のところに、女性(成人)の場合は、55~56%のところに重心があるとされています。
この表し方は、比重心高(身長に比べた重心の高さ)と言うのですが、ざっくり言うと、おヘソの上下付近に物理的な重心があるということです。
立位(立った状態)の場合、この重心を通る垂直の線が、人体の中心線になります。
歩く、走る、飛ぶ、組み合う、投げる、蹴るなど体を動かす際、コアとなるのは、いわゆる体幹部分になります。(何故、体幹部分がコアになるかについては別のコラムで)
どのような動きをし、体幹部分を倒したり、捻ったりしたときも、基本的に立位時の中心線を保ち、同時に全体(全身)のバランスがとれていること。
これが、中心軸ができた状態です。
例えば、立位の時は正しい姿勢であっても、体を動かすと、重心がブレる人がいます。
動きによって、武道で言うところの腰が据わってない、腹が抜けている状態などになってしまうのです。
このような状態になることなく、常に重心のバランスを取れるのが、中心軸ができた状態。
つまり、中心軸とは、構造的に中心軸というものが有るわけではなく、重心のバランスを保つことができる体の状態のことを指しているのです。